2023/02/25
自分のこと
目次
皆さんは、精神科医と患者さんがどのようなやりとりをしているのか聞いたことが無いと思います。このやりとりには、うつ病予防のポイントがたくさん隠れています。ちょっと覗いてみましょう。
精神科にうつ病治療に来られた、ある患者さんと精神科医の会話です。
「今までにも時々、1週間くらい、夜中目が醒めたり、朝起きる時間より早く目が醒めるということが続くことはあったんです。でも、1週間もすれば自然に良くなっていました。でも今回は3週間経ってもそれが続いたので、ちょっと調子が悪いのかなあとは思っていたんです」
「その時に、病院に来られれば良かったんですよ」
「いま考えればそうですね。でも、今までも頑張って仕事を片付けているうちに、自然に何とかなっていたのであまり気にしていませんでした。でも、3週間過ぎたくらいから、急に疲れが取れなくなって、お酒も増えて、するとますます疲れが取れにくくなって」
「悪循環ですね」
「そうですね。そして、4週間くらい経ったころから、何もかも面白く無くなってきて。やる気が起きなくなって。でも、それまでストレスはあまり感じなかったんです」
「何を言っているんですか?感じなかったも何も、それまでの状態がストレスです。夜中に目が醒めたり朝早く目が醒めていた時からじゅうぶんにストレス状態です」
このやりとりを読んで、どう思われますか?
ストレスを全く感じなかったという訴えは決して珍しくありません。自分はストレスを感じないと思っている人は結構いるものなのです。
ストレスが無いという表現は、正確には間違いです。ストレス状態とは、心身が何らかの圧力を受けている状態のこと、だから人は生きている以上、ストレスがあるという状態にいるのです。
日常の生活で起きる出来事はほとんどがストレスの要因となるのです。なので、生活していて“今はストレスが少ない”とは言えるかもしれませんが“ストレスが無い”とは言えません。
つまり、私たちは常に様々なストレスの要因にさらされていて、ストレス状態も強くなったり弱くなったりを繰り返しているのです。
“自分にストレスは無い”と思いこんでしまうと、いまのストレス状態に無頓着になり、警戒心が無くなってしまいます。その結果、ストレス状態であったことに気づかず毎日を過ごしてしまって、突然病気になるということになりかねないのです。
“私にはいつもストレスがあって、毎日その状態が変化している”ということを認識しましょう。“今はストレスが少ない”というように“少ない”“多い”という意識に変えましょう。
そうすれば、ストレスが強くなり始めたときに、敏感に察知することができます。
自分にストレスがあることを理解することも、ストレス予防のひとつなのです。
株式会社メンタルサポート研究所 代表 博士(学術)・臨床心理士 倉成央