言い訳ばかりする男の子

2023/06/25

家庭のこと

目次

行動だけ叱る

講演会にいらっしゃったお母さんから教えてもらった話です。
小学生になったばかりの一年生の男の子は、悪さばかりするので、お母さんはいつも学校に呼び出されるのだそうです。学校に呼び出されて、自分の子どもが他のお子さんを叩いたなどと聞くと、お母さんは子どもに向かって、つい「何であんたはそうなの!ほんとに困った子ね。あんたなんか嫌い!」と、感情に任せて怒鳴ってしまうというのです。

すると、男の子は必ず「だって…」と、あれこれと言い訳をして決して謝らないのだそうです。
私は、こころの子育て講演で「叱る時は、存在を否定せず、行動だけ叱りましょう。」と、お話しました。

いつものように怒鳴りそうに

ちょうどその日、お母さんが講演会から家に帰ると担任の先生から呼び出しの電話があり、お母さんは学校に駆けつけました。
男の子が小石を投げて、クラスの子に軽い怪我をさせてしまったそうです。お母さんが学校に着くと、担任の先生、怪我をしたお子さんとそのお母さん、自分の子と合わせて4人が神妙な面持ちで、待ち受けていました。お母さんは、同じようなことを繰り返す我が子の情けなさに、思わずカッとなって、いつものように怒鳴りそうになりました。

その瞬間、さっき聞いたばかりの話を思い出しました。
「○○(子どもの名前)、小石を投げる行動はいけないでしょ」

お母さんがそう言うと、いつも言い訳するその男の子は「ごめんなさい」と、謝りました。
彼が素直に謝ったのは、これが初めてのことでした。お母さんが後で振り返っておっしゃるには、「自分でも意外と冷静に叱ることが出来た」のだそうです。

言い訳ばかりしていた原因

さて、これまでこの男の子は、言い訳ばかりしていました。それは、どうしてでしょう?
原因は、二つ考えられます。まず、お父さんかお母さんが言い訳ばかりしている姿を、普段から見せているのかもしれません。
もうひとつの原因、このケースの原因ではないかと考えられるのは、これまでお母さんの叱り方が、子どもには存在を否定されたように感じてしまっていたということです。
私たちは、行動を間違えます。子どもであれ、大人であれ、行動は間違ってしまうのが人間です。たとえ、行動を間違っても、人間の価値や尊厳が否定されるわけではありません。
ところが、私たち母親は子どもが失敗した時に、つい「あんたなんか嫌い!」
「言うこと聞かないなら、あっち行きなさい!」
「あんたって駄目ね!」と、言ってしまうことがあります。

人間の存在や価値自体を否定する言葉⁈

残念ながらこれらの言葉は、人間の存在や価値自体を否定する言葉なのです。
子どもを叱る時には、決して、存在を否定せずに行動だけ叱りましょう。
それでも、子どもが言い訳するようなら、一度自分たち親の行動を振り返ってみましょう。もしかしたら、お母さん、お父さんが素直に謝っていないのかもしれません。親だから謝らなくて良いなんてことはありません。素直に謝ることは、私たち大人にとっても簡単そうで、案外難しいことなのかもしれません。親だからこそ、間違ったら謝る姿を子どもに堂々と見せるのです。
「ごめん。悪かった」
また、子どもが間違ったら、言ってみてください。
「その行動はいけないよ」「そういう風にするのはいけないよ」と。

株式会社メンタルサポート研究所 代表 博士(学術)・臨床心理士 倉成央