あれこれ考えすぎて“動けない人”のための問題解決術part2

2021/11/30

自分のこと

目次

さあ、ここからスタートしていきましょう

考えたことを次々と行動に移す人たちがいます。そういう人たちを行動力があるといいます。一方で、考えるばかりでなかなか行動に移せない人がいます。そういう人たちは、行動力を身につけたいと願っているかもしれません。さて、その違いはなんなのでしょうか。コラムの中では、後者の「なかなか行動に移せない人」について、少しづつお話をしていきます。

今回のコラムは「あれこれ考えすぎて動けない人のための問題解決術part2」です。Part1では、「なぜ動けないのか」に着目しお話をしております。気になる方は、前月のコラムをご覧になってみてください。さて、今月は、「なかなか行動に移せない人」の不安が消える方法についてお話をしてきます。不安が消えた時、あなたはどうなると思いますか?
さあ、ここからスタートしていきましょう。

不安と心配どちらが先か

 一般的には不安が先に湧き上がってきて、不安だから心配してしまうというのも正しい感覚でしょう。それでは、心配が先と不安が先。どちらが正解でしょうか?

 実はどちらも正解です。心配は事実ではない思い込みです。その根拠のない思い込みを心配し、不安になるのは正しいでしょう。しかし心配し始めるときにすでに不安になってしまっているというのも正しいです。

 実は、心配するから不安という問題の根底に、不安や心配を次々に生み出す根っこの問題が存在します。もし不安を減らし、心配をやめたいと思うのであれば、その基底にあってそれらを生み出している原因、それを解決することが必要なのです。
 それを「インナーメッセージ」といいます。

思い込みの奥の根っこにあるもの

 インナーメッセージというのは、「事実ではない歪んだ考え方」「不快な感情」「好ましくない、反応や行動」の基となっているものです。つまり私たちの思い込みや不安を生み出す源泉のようなものです。

思い込みとインナーメッセージの違いについて述べておきましょう。思い込みは親が言った言葉を取り入れたもの、それに対してインナーメッセージは親の態度に対して情緒的に決断したものです。そして思い込みよりもインナーメッセージのほうが、より小さいころに決断されています。

折にふれ、そのときの感情がよみがえる

 インナーメッセージは、子供のころに養育者、つまり親との関わりの中で決断されるもので、自分の思考や感情や行動の源となります。つまり「私は行動してはならない」というインナーメッセージは、不安を湧き上がらせ行動をストップさせる源になるのです。

 人は成人し大人になってからも、インナーメッセージを決断した場面で感じた感情とインナーメッセージを再体験します。同じような状況に遭遇したときに、瞬時にかつて決断したときの感情を味わい、インナーメッセージに従います。
 成人し会社勤めをしている方の場合、仕事で何か行動しようとするたびに、子供のころの「私は行動してはならない」と決断した場面に引き戻され、そのときに感じた不安(恐れ)と行動してはならないという心の声を聴くことになるのです。
 
決断したのは子どものころですが、その決断の場面と輪ゴムでつながれ、同じような状況に遭遇したときに輪ゴムで元に場面に引き戻されるように、子どものころと同じ感覚を体験してしますのです。

あなたの不安の根本にあるメッセージは何か

あなたが何かをやろうとするときに、ブレーキをかけてしまうインナーメッセージは何でしょうか。
あなたを不安にしてしまうインナーメッセージは何でしょうか?

自分のインナーメッセージについて難しく考える必要はありません。それよりも感覚を大切にしたいと思います。行動にブレーキをかける可能性があるインナーメッセージを列挙しました。これらの中からピンをくるものを選んでみてください。

・私は行動してはならない
・私は決めてはならない
・私は重要でない
・私は欲してはならない
・私は考えてはならない
・私は見えてはならない

インナーメッセージはこれら6つだけではなく、他にも「私は存在してはならない」「私は近づいてはならない」「私は所属してはならない」「私は楽しんではならない」「私は成長してはならない」など20以上あります。それらの中から行動にブレーキをかける可能性がある6つのインナーメッセージを選び出しています。

これらの6つの中で、行動のブレーキに比較的影響が大きいのは「私は行動してはならない」「私は決めてはならない」「私は重要でない」の3つです。しかし「私は欲してはならない」「私は考えてはならない」「私は見えてはならない」も、人によっては大きな影響を持つ場合があります。

性格は変えられる

 性格は変わらないと言われることがありますが、それは間違いです、性格は変えることができます。性格が変わらないと思っている人は、性格の正しい変え方を知らないのです。過去に自分に合わない方法で性格改善を試みてうまくいかず、そしてやっぱりダメだったから性格は変わらないのだと信じてしまっているだけです。

生まれてからいままでの様々な体験を通して、どのように考え、感じ、行動するかを決めます。私たちはたくさんのことを決断してきていまに至っています。だから、性格というのは決断が集まってできているともいえます。

それぞれの状況で、どのように考え、感じ、行動するかの決断の中でも、子供のころのものは、親の言動が影響しているのも事実ですが、結局は私たちが自分で決断したものです。親から同じように言われたからといって、すべての子供が全く同じ決断をするわけではありません。決断の主体が自分である以上、それは変えることが可能なのです。
つまり、自分の考え方や感じ方、また行動や反応は、生まれつきのものでも、また脳の中に埋め込まれたものではなく、自分で決断したのですから決断し直すことができるということです。

不安の感情を処理する秘訣

 インナーメッセージを変えていく必要があると、皆さんお気づきかと思います。しかしインナーメッセージを変える前に、大切なことがあります。それは感情を処理するということです。ここで感情を処理するとは、不安を減らすということになります。
感じている感情をじっくりと味わい、それを受け止めます。受け止めるというのは、それを否定せずにじっくり感じてみること。そしてそのような感情を持つことを自分に許可することです。

「こんな気持ちを持ってはいけない」「親に対してこんな感情を持ってはいけないのでは」などと、感情を批判や否定する気持ちが働いてしまうと受け入れていることにはなりません。受け入れるというのは、「いやと感じるのは自然なことなんだ」「だから嫌と感じていいんだ」とそのまま無批判に感じてみることなのです。
このように不快な感情を直接減らすやり方を「感情処理法」といいます。少しずつ、あなたのペースで実践していってみましょう。

あなたは必ず変われます

 交流分析の基本的な考え方の中に、「人は自分の運命を決め、そしてその決断は変えることができる」という哲学があります、つまり、人は自分で自分の人生を変えることができるという考え方です。人が変われるということは紛れもない事実です。そして、あなたは必ず変われます。これもまた、紛れもない事実です

 

”あれこれ考えすぎて“動けない人”のための問題解決術/大和出版
株式会社メンタルサポート研究所 代表 博士(学術)・臨床心理士 倉成央