「うつ」は未然に防げる

2023/10/25

自分のこと

目次

誰しも人生で何度も体験すること

どういう状態のときに「うつ病」になりやすいかについて述べてきましたが、いずれの場合もストレスが大きく関係しています。

そうです。先ほど述べた「うつ病」になりやすい性格の人が、離別であれ、人間関係の悩みであれ、「仕事の内容・責任」の変化であれ、そこから生じるストレスに長期間さらされたときに、あるいはそのストレスが強すぎたときに、「うつ病」にかかってしまう可能性が大きくなるのです。
仕事を頑張っている人の多くは、「うつ病」になりやすい性格にチェックがつくはずです。そして、「うつ病」になるきっかけの出来事は、誰しも人生で何度も体験することです。ですから、「私は大丈夫」「自分は平気」などとは、くれぐれも思わないでください。

自分の今の置かれている環境が、ストレスの大きい状況になっていないかどうか

今、仕事がものすごくハードだったとしたら……、人間関係で気を遣っているとしたら……、プロジェクトを成功させるために、気の休まらない状態が続いているとしたら……。そういうときこそ、気をつけてください。

自分では認識できなくとも、自分の認識の水面下でそういったものがストレス要因となって、あなたの心にじわりじわりと圧力を与え続けているかもしれないのですから。「自分では認識できなくとも」と言いましたが、ストレスがかかっているときには、逆にストレスをはねのけようというパワーが湧いてきて、むしろ元気な状態であることも多いのです。だから、ストレス=落ち込み・元気がない、という考え方も正しくないのです。

ストレスがその限界点を超え、張りつめていた緊張の糸がプツンと切れたときでは、もう遅いのです。回復するに至るまでには長い長い道のりが待っているのです。だからこそ日頃から、自分の今の置かれている環境が、ストレスの大きい状況になっていないかどうか、気をつけてほしいのです。

ストレスをためにくい状態に自分を導いていくこと

ただ、こう言うと、皆さんのこんなつぶやきが聞こえてきそうです。
「自分だって、本当はゆっくり休みたいし、人間関係のわずらわしさから解放されたい。でも、それができないから、こんなに大変な思いをしているんだ」
なるほど、そのとおりかもしれません。確かに、責任感が強く人に気を遣うような性格がうつになりやすいからといって、いいかげんな仕事をしたり、人間関係をないがしろにしていたら、会社では評価されなくなってしまいます。

あなたが今たまたま「うつ病」になりやすい性格だったとしても、それはむしろ社会ではよい部分として評価されていることも多いはず。それなのに、今の性格を変えようなんて言われたら、抵抗があるのではないでしょうか。
だから、よい部分はよい部分として残しながら、その上で、自分にさらなるストレスがかからないように、少しずつ変えていくといいのです。工夫しだいでは性格だって少しずつ変えていくことができるし、ストレスを感じる度合いだって、いくらでも弱めていくことができるのです。

そう、気持ちを楽なほうへ楽なほうへと持っていく一方で、ストレスをためにくい状態に自分を導いていけば、「うつ病」にかかりにくい体質に変身することが十分、可能になります。

うつにならない言葉の使い方/ダイヤモンド社
株式会社メンタルサポート研究所 代表 博士(学術)・臨床心理士 倉成央