2021/05/11
自分のこと
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そもそも、メンタルが強いとはどういうことでしょうか。何人もの人に、“メンタルが強いとはどういうことだと思うか?”を尋ねてみました。“メンタルヘルス不調に陥りにくいこと”それも多い回答でした。私の周囲の人たちの、「メンタルが強いとはどういうことか?」に対する質問の回答は、“ストレスに負けないこと”“逆境に強いこと”“立ち直りが早いこと”“ぶれないこと”“嫌なことを引きずらないこと”“都合の悪いことを人のせいにしないこと“”人の意見に振り回されないこと““些細なことで感情的にならないこと”“情緒不安定にならないこと”“くよくよ悩まないこと”“落ち込まないこと”など、人によって回答は様々でした。そしてどれもなるほどと納得させられます。
このコラムでは、“メンタルが強い”を心地よく過ごしている時間が長いことにしたいと思います。
本人が意識してるかしてないかに関わらず嫌な気分の時間が少ないことです。イライラしているのにイライラしてないと思っている人、つらいのにつらくないと思い込もうとしている人は、意識していないけれども嫌な時間を過ごしていると考えます。そういう場合は意識していなくてもメンタル不調に陥る場合が少なくありません。そういう人はカウンセリングでしばしば見かけます。カウンセリングに来た当初は、「なぜ自分がメンタルヘルス不調になってしまったかわからない」と訴えますが、カウンセリングが進むうちに、自分がストレスに不快な気分を持ち続けていたこと、ストレスに気づかないようにしていたことを理解していきます。嫌な時間が少なく心地よい時間が多い人は、ストレス状態ではなくメンタルヘルス不調に陥ることもありません。メンタルヘルス不調に陥ることがないから、うつ病やパニック障害・対人恐怖症などの不安障害に陥ることも少なくなるでしょう。現に、私が精神科の医療機関でカウンセリングしているクライアントで、うつ病や抑うつ気分が強い方には、ここで紹介する、メンタル強化に取り組んでもらうことがあります。その結果、メンタル強化に取り組んだクライアントさんたちは、メンタルが弱いままでお薬で治療した場合より、再発率が非常に低くなっています。このことは、メンタルを強くすることがメンタルヘルス不調を予防する上でも重要だと示しています。
またある70歳代のクライアントは、自分の言いたいことを相手の顔色を見て表現することができませんでした。相手が不快な気分になったらどうしようと考えるあまり、自己主張ができなかったのです。相手が不快な気分になったらいけないと気を遣っているととてもストレスです。自分が本当に言いたいことも、相手の反応を気にするあまり言えなくなってしまいます。そして、言いたいことが言えないと、そういう自分を情けないと思い気分が沈んでしまうことが多かったのです。しかしながらメンタル強化に取り組むうちに、自分の言いたいことを言葉にすることは悪いことではないと思えるようになり、相手の反応を過剰に気にすることなく自己主張ができるようになりました。その結果、言いたいことが言えないとくよくよすることも減りました。
さらにもうひとつ、50歳代のクライアントの話です。彼はいつも強がっていました。自分の弱みを見せることができませんでした。自分のことを少しでも良く見せることに気を遣っていました。そして自分の良くないところを相手から見えないように取り繕うことにエネルギーを使っていました。本当は、お客さんに頼み込んでやったことも、さもお客さんから自分が頼まれたから仕方なくしてあげたという話に風呂敷を広げることに専心していました。その後メンタルの強化に取り組んでいった結果、相手からどう見られるかではない自身の真の価値に気づき、それを受け入れるようになっていきました。相手からどう評価されるかによって決まる自身の価値は社会的な関わりの中での価値です。しかしながら人の自信につながっていくのは、自身の存在そのものに対する価値、すなわち基本的な価値なのです。基本的な価値は、他者からどのように評価されるかに左右されません。自分で自分の価値を認めることができる価値なので、とても安定したものです。他者からネガティブに評価されたとしてもあまり揺らぐことがありません。その結果彼は、自分の評価を守ることに専心する必要が無くなりました。いえむしろ、今までは自分の評価を守ろうとすることにエネルギーや注意を払い疲れていたことに気づいてさえいませんでした。メンタルを強化していく過程で、自分が他者からの評価に大きく左右されること、そして他者からの評価を得たいがために大きなエネルギーを使い続けていたことに気づき、それをやめることができたのです。そして彼は“毎日生きているのがとても楽”“メンタルが大きく揺らぐことがなく安定している”ことができるようになりました。
このようにメンタルは、あなたがいま何歳であったとしても、これからの取り組みでいくらでも強くすることができるのです。そしてそれをやることで、毎日がとても心地よいものに変わっていきます。いままで自分が楽に生きていなかったこと、ストレスフルな生き方をしていたことに気づき、そこから解放されるのです。
このコラムでは、数回のシリーズでメンタルを強くするためにどうすればいいのかを説明していきます。メンタルを強くするためのポイントをいくつかにまとめて、わかりやすく説明していきたいと思います。これを活用することで、皆さんの嫌な気分が減り、毎日が心地よいものになっていくことを願っています。
株式会社メンタルサポート研究所 代表 博士(学術)・臨床心理士 倉成央